薄いログ

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ザラザラ表紙に貼ってあるブックオフの値札は剥がす時に緊張する

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  仮にも絵や漫画を描く人間なら多少なりとも「食えない人々」がいることくらい知っている。特に漫画家は売れない・食えない身の上話で溢れている。そんなもの描くんじゃねえ、というわけではなく、フツーに危険な領域だなぁとは思うこの頃。

 とある芸能人が絵本(の中身)を(電子媒体で)無料公開したという話が少し前まで話題になっていたのですが、カッコ書きを飛ばして「価値のある物を無料公開するなんてクリエイターを侮辱している!」みたいな罵倒にまみれておりました。まあ芸能人側も物議を醸す前提の挑発的な言葉遣いでその目的も「子供のため」から日が経つにつれ「売上のため」と二転三転、肝心の反論も売上UPを主軸にした結果論だったのでどうやっても擁護できないとはいえ反論側も感情的になりすぎちゃったフシがある(でもそれは扇情的な言葉を使ったオマエのせいだ)。肝心の問題点とは無料公開というのをそこそこ発言力のある人が誤解されやすい(誤解するほうが悪いともいう)言葉を使っちゃったので消費者側がカン違いを起こさないのか、つまり「あれは無料公開してたのに」というような無意識のダンピングが発生するとヤバイね、という所だったわけである。ていうか最初に問題にしてた人たちはこの話をしていた、よね?

無料公開と古書

 この無料公開とおんなじくらい、いやもっとアツく昔から怒られているのは古本問題である。つまり古本を買った人は「新品で買うほどでもなかった。やったー」程度かもしれないが肝心の作者には一銭も入らないという問題。ところがこういう問題は漫画やライトノベル、ミステリノベルスにゲームとかでは大いに議論され続けているがもっと「本」みたいなもの、つまり古書(漫画だって古書だぞ、という反論はまあ)はあんまり問題視されない。神保町や京都の古書店にフラリと入ると思いがけない絶版本が手に入って嬉しかった、みたいな。ここがミソじゃないですか?

 私、メジャーとまでは言わないけどそこそこ読む人がいるという漫画が結構すきなんですが、そういうのをいつ知るかというと大抵完結後、それも数年とか経ってからなんですよ。そういう本を買いたいなーと思って新品の売ってる書店に行くと売ってない。M善とかJ堂、S堂とかK屋みたいな品揃えの比較的良い書店でも全然なかったりするのですよ。「ああ、書店もとうの昔に完結した漫画はないのか、そこそこ人気なのにな」とか思ってじゃあ取り寄せればいいのかなーと思って出版社の公式サイトで直接買おうとしても品切れだったりする。つまりは絶版。こうなるともう新品はどうやっても(いや、どうにかすれば買えるかもしれんけど)買えない。でも読みたい、現物が欲しい。こういう需要に応えてくれるのはBックオフをはじめとした漫画古本屋しかないんです、私みたいな情報弱者には。

マイナー漫画は鮮度が命

 こうした比較的マイナーだけど一種カルト的ともいえる人気のある漫画は、単行本が刊行してからある程度の時間が経つとすぐに店頭から姿を消してしまう。理由は勿論、売れないから。最近は作家さん方がSNSを駆使して漫画販売のカラクリ(常識?)について解説してくださっているのですが、それによると単行本は初週が命、なんだとか。当然ではあるが、日が経つにつれどんどん売れなくなっていく。ここでメジャー作品とそれ以外で明暗が別れ、マイナー作品は店頭に置くことすらムリ、というくらいに売れなくなっていくため重版がかかりにくくなる。つまりこれ以上書店に出回らない。出版業者も営利団体だし、残念だけど売れないものを少ないファンのために半ば賭けで重版するよりは売れるものをどんどん刷っていったほうがお得なのである。かなしい。

 商業的な事情を考えたら至極全うだと思うのですが、それでは私みたいな(おこがましいな)後々ファンになった人たちに余りにも冷酷じゃありませんか?出版業界は腐っている!改善をせねば!――なんて安い抗議デモでもすればいいんですか?……なんて言うつもりはないですが、好きな漫画のはずなのに古本で買っちゃったよ…みたいな罪悪感を抱くひとって言うのは一定数いる気がします。いるんじゃないんですかね?居ますよ!居ますから!

 ちなみにマイナー作品ですが、沢山の漫画雑誌とコミックスレーベルを抱える大手出版社に比べると「サブカル」などと揶揄されるようなマイナー雑誌の方が人気に関わらず店頭残存率が高い気がします。というかこれはモノサシが違うわけで、私があーだこーだ言ってる「マイナー作品」はメジャー誌では埋もれた存在でもマイナー誌では雑誌の柱みたいなレベルで売上に貢献してる、ということが往々にしてあるっぽいですよ。そりゃ力の入れ方が違うはずだ。というかメジャー誌のメジャー作品は作家の強い意志とかない限り長々と連載されていくのでどんどん同じ漫画のコミックスが店頭に占める割合が多くなっていくんだろうなーと思いますよね。というかマイナー作家が長々と連載されていくのをあんまり見たことがない。「サブカル」扱いされる漫画も単巻や上下巻の割合が中々に高い。結局連載という行為自体が作品/作家の人気を前提としたものなので巻数が少ない作家というのは(実は単に遅筆寡作なだけという可能性があるのに)売れてない、という見方をされてしまう。出版社側も数巻で終わって久しい漫画に構っている暇はない、と。うーん、ごく普通の淘汰だが悲しいな。

支援のつもりで新品を買ったのに!!

 「本当にこの漫画が好きなら古本やネット上の違法アップロードではなく新品を買え」という言葉はめちゃくちゃ正しいと思うし私もできるだけ従いたい。というか私がブックオフで好きな漫画を買ってるなんて「テメエそれでも漫画を愛しているのかよ」と言われても仕方ないとおもう。でも出回っていないものを、出版社からすら買えない作品をどうやって新品で買うんだろう、という悩みも生まれるし、そもそも「俺が一冊新品を買ったから作者にもお小遣い程度の収入が生まれるはずだ」というのは、違う。

 単行本の刊行による印税収入は1冊売れたからはい数十円、というわけではなく(普通に考えて面倒くさいよね)1刷ごとに刷った部数分の印税が支払われる……というのは曲がりなりにもずっと漫画を買ってた私が知らなかった知らなきゃ恥ずかしい出版業界の事実でした。つまり「書店に奇跡的に置いてあったとしてもその作品はもう出版が終わっていること」だって普通にあるわけですよ。そしてそこまで出版の苦境に立たされた漫画を買ってくれる人(連載終了後、刊行後数年経って何の縁だか知らないが買ってみようとなった人)っていうのがどれだけ現れるのだろうか。最悪私一人なんですよね。

 時に口コミとか発言力のある人が取り上げたり、メディアミックス作品がウケたりすると再販が決まることがある。ジブリ映画の原作になった少女漫画群がいい例ですね。あと、作家が有名になるとその人気にあやかって「初期作品集」とか言う形で出版されたり、過去作が新装版で出たりもする。が、こうした出来事が全てのマイナー作品に降り注いでくれるなら、普通に考えて最初からみんなそこそこ買われていくでしょうね。つまり「この漫画が好きだから作者さんにお金が渡って他の(もしくは続きの)作品も描いてほしいな」という心理から発生した「ファンたるもの新品を買わないといけない」という強迫観念にも近い不文律は、時に全く功を奏さなかったりする。「いや、それでも買ってくれる人がたくさん現れたら重版がかかるかもしれない」というのも確かにそうだけど、果たしてそうなる確率はどれくらいなのか。出版社側もそうしたファン側の事情を汲んでくれますかね。汲んでくれたらいいんですけどね。所詮こっち(と作者)の都合なわけで…

電子のジレンマ

 こうした状況があるせいか、時々SNSを使う漫画家さんが数年前の作品とかを「電子書籍」で買って欲しい、という告知をしたりする。一回でまとまった量を刷らないといけない紙媒体と違って、電子書籍は柔軟性があるので「一冊で数円」が可能らしいのです。つまり「もう店頭にないだろうし、書店をあさって奇跡的に新品を見つけて買っても多分重版かからないからお金にならないんです」という意思表示でもあるわけですが、ここでゲームなどでも言われるような「どうしても現物が欲しい」人々は苦境に立たされる。電子書籍を買えばいいのか、諦めて古本をさがすしかないのか、というコレ。電子書籍買ってから古本買えばいいじゃん、とはならないくらいには懐の余裕がヤバイし合理性を持っている。こうした人々は「作者に一銭も入らない」ことを承知で古本を買うことになるわけで、物質的には殆どその所有内容が変わらないのにモラル面で罪悪感を感じたりするわけです。メンドクサイ人種だなあ、と思ってくれてかまわないんですけど、こっちは結構真剣に悩んでたりするんですよ……